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グランドセイコー スプリングドライブの寿命は?一生もの説を5つの視点で検証

グランドセイコー独自の革新的な機構として知られるスプリングドライブ。「機械式とクォーツのいいとこ取り」と評され、その滑らかなスイープ運針に魅了される方は多いでしょう。しかし一方で、「実際のところスプリングドライブの寿命ってどうなの?」「本当に一生ものとして使えるの?」といった疑問や、そのユニークさゆえの長期的な信頼性への不安を感じている方もいらっしゃるかもしれませんね。

私自身、様々な腕時計に触れてきましたが、このスプリングドライブという存在は常に特別な興味を引くものでした。今回は、そんなスプリングドライブの寿命に関する様々な疑問や巷の噂について、愛好家としての視点も交えながら、徹底的に情報を集め、検証してみました。

この記事を通じて、スプリングドライブが「寿命がない」とも言われる理由、その背景にある仕組み、一方で無視できない懸念点、そして愛機として長く付き合っていくための具体的な方法が明らかになります。適切な知識を持ち、愛情のこもったメンテナンスを行えば、スプリングドライブは非常に長い間、あなたの腕で輝き続ける魅力的なパートナーとなり得るのです。

この記事でわかること
  • スプリングドライブの基本構造と「寿命はない」と言われる真意
  • 機械式やクォーツと比較した際の寿命に関するメリットとデメリット
  • 電子部品の耐久性や部品保有期間(10年問題)といった懸念点の実情
  • 推奨されるオーバーホール頻度・料金目安と日常での注意点

果たしてスプリングドライブは、あなたの期待に応える「一生もの」の時計となりうるのか。この記事が、その疑問に対する明確な答えを見つけ出し、あなたが自信を持ってスプリングドライブを選び、末永く愛用していくための一助となることを願っています。


目次

徹底検証!グランドセイコースプリングドライブの寿命【構造・比較・懸念点】

グランドセイコースプリングドライブの寿命について考える上で、まずそのユニークな仕組みや他のムーブメントとの違い、そして巷でささやかれる懸念点を理解することが重要です。ここでは、スプリングドライブの基本的な知識から、少し踏み込んだ疑問点まで、多角的にその実像に迫っていきましょう。

スプリングドライブの仕組みと「すごさ」

まず、「スプリングドライブって何がすごいの?」という点からお話ししましょう。この機構の核心は、機械式時計の伝統的な「ゼンマイ」を動力源としながら、時間の精度をクォーツ時計に使われる「水晶振動子」と「IC(集積回路)」で制御する、セイコー独自のハイブリッド構造にあります。

具体的には、ゼンマイがほどける力を利用して発電し、その電力でICと水晶振動子を動かします。そして、水晶振動子が生み出す正確な信号(1秒間に32,768回!)と、歯車(ローター)の回転速度をICが比較。ローターに電磁ブレーキをかけることで、機械式時計の心臓部であるテンプや脱進機(アンクル、ガンギ車)を使わずに、極めて正確な速度制御を実現しているのです。この一連の制御システムをトライシンクロレギュレーターと呼びます。

これにより、機械式時計のような力強いトルク(針を動かす力)を持ちながら、クォーツ時計に匹敵する高精度(月差±15秒~±10秒程度)を両立。さらに、秒針がカチカチと動くステップ運針ではなく、まるで水面を滑るように連続的に流れる「スイープ運針」も大きな特徴です。この静かで美しい動きは、途切れることのない「時の流れ」を表現しており、多くの時計ファンを魅了してやみません。

まさに、機械式の力強さとクォーツの知性が融合した、唯一無二のメカニズムと言えるでしょう。この独自の構造が、後述するスプリングドライブの寿命に関する議論にも繋がっていきます。

なるほど、ゼンマイで動いてるけどクォーツで制御してるのか!面白い仕組みだな。

公式見解「寿命はない」の真意とは?

さて、本題の「スプリングドライブの寿命」についてですが、セイコーやグランドセイコーの公式サイトなどを見ても、「寿命は何年です」といった明確な記述は見当たりません。むしろ、「定期的なオーバーホール(分解掃除)を行えば、機械式時計と同じように長く使い続けることができる」といった趣旨の説明がされています。

これはどういうことでしょうか? ポイントは、スプリングドライブがクォーツ時計のように「電池」をエネルギー源としていない点です。クォーツ時計は電池が切れると止まってしまいますし、電池を交換しても電子回路自体に寿命が来ると、修理が困難になる場合があります。

一方、スプリングドライブは動力源が機械式時計と同じゼンマイです。理論上、部品が摩耗したり破損したりしても、その部品を交換し、定期的にメンテナンスを行えば動き続けることができます。この点において、「寿命はない」とは、適切なメンテナンスを前提として、機械式時計のように部品交換をしながら永続的に使用できる可能性を指していると考えられます。

ただし、純粋な機械式時計と異なり、スプリングドライブにはICや水晶振動子といった電子部品が組み込まれています。これらの部品の耐久性については、次の項目以降で詳しく見ていきましょう。スプリングドライブの寿命を考える上で、この「機械式」と「クォーツ」のハイブリッドである点が非常に重要になります。

機械式時計との寿命・精度の違い

スプリングドライブの寿命を考える上で、よく比較されるのが伝統的な機械式時計です。機械式時計も、定期的なオーバーホールと部品交換を行えば、数十年、場合によっては100年以上使い続けることが可能です。その意味では、スプリングドライブの寿命の考え方は機械式時計に近いと言えます。

しかし、両者には決定的な違いがあります。それは「精度」です。一般的な機械式時計は、姿勢差や温度変化など外部の影響を受けやすく、一日に数秒から数十秒の誤差(日差)が生じるのが普通です。熟練の職人が調整しても、この日差をゼロにすることは極めて困難です。

対してスプリングドライブは、水晶振動子によって精度が制御されているため、月差±15秒~±10秒(日差に換算すると±0.5秒程度)という、クォーツ時計に匹敵する驚異的な高精度を誇ります。動力源がゼンマイであるため、機械式時計と同等の強いトルクを持ち、グランドセイコーらしい太く堂々とした針を正確に動かすことができるのも魅力です。

以下の表に、寿命と精度の観点から両者の違いをまとめました。

項目 スプリングドライブ 機械式時計
動力源 ゼンマイ ゼンマイ
調速機構 トライシンクロレギュレーター
(IC、水晶振動子、電磁ブレーキ)
テンプ、脱進機
精度 高精度(月差±15秒~±10秒) 日差±数秒~数十秒
寿命の考え方 OH・部品交換で長期使用可能 OH・部品交換で長期使用可能
針を動かす力 強い 強い
スプリングドライブと機械式時計の比較(寿命・精度)

機械式と同じく部品交換で長く使える可能性を持ちながら、圧倒的な高精度を実現している。これがスプリングドライブの大きなアドバンテージであり、スプリングドライブの寿命を語る上で無視できない点です。

クォーツ時計との寿命・パワーリザーブの違い

次に、もう一方の代表的なムーブメントであるクォーツ時計と比較してみましょう。クォーツ時計は電池を動力源とし、水晶振動子で精度を制御します。精度という点では、標準的なクォーツ(年差±10秒など)はスプリングドライブ(月差)を上回るものも多いです。

しかし、寿命の観点では異なる側面が見えてきます。クォーツ時計には、まず「電池寿命」があります。通常2~5年程度で電池交換が必要となり、その手間とコストがかかります。さらに、より根本的な問題として「電子回路の寿命」があります。一般的に10年~数十年と言われますが、回路が故障した場合、特に古いモデルでは部品がなく修理不能となるケースも少なくありません。

一方、スプリングドライブは自己発電するため電池交換が不要です。そして、動力源がゼンマイであるため、機械式時計のように「パワーリザーブ」が存在します。多くのモデルで約72時間(3日間)、中には8日間や5日間といったロングパワーリザーブを持つモデルもあります。これは、数年で電池が切れるクォーツと比べ、実用面で大きなメリットと言えるでしょう。

以下の表で、クォーツ時計との違いを比較します。

項目 スプリングドライブ クォーツ時計
動力源 ゼンマイ(自己発電) 電池
調速機構 トライシンクロレギュレーター 水晶振動子、IC
精度 高精度(月差±15秒~±10秒) 極めて高精度(年差±数秒など)
寿命の考え方 OH・部品交換で長期使用可能
(電子部品の懸念あり)
電池寿命(数年)
回路寿命(10年~数十年)
パワーリザーブ 長い(72時間~) なし(電池が切れるまで)
スプリングドライブとクォーツ時計の比較(寿命・パワーリザーブ)

電池交換の手間がなく、パワーリザーブも長いため実用性が高い。これがクォーツと比較した際のスプリングドライブの寿命と利便性における特徴です。

クォーツみたいに数年で電池交換しなくていいのは楽だな。パワーリザーブも長いし。

デメリット?電子部品の耐久性は?

さて、ここまでスプリングドライブの良い点を見てきましたが、長期使用を考えた際の懸念点、いわゆるデメリットについても触れておかなければなりません。それが「電子部品(IC、水晶振動子)の耐久性」です。

機械式の部品と異なり、これらの電子部品が経年劣化した際に、どの程度の期間、交換部品が供給されるのか、また将来的に修理が可能なのか、という点がユーザーにとって最大の不安要素と言えるでしょう。純粋な機械式時計であれば、極端な話、部品を一つ一つ作り直してでも修理できる可能性が残りますが、専用のICなどはそれが難しいのでは?というわけです。

これに対する現時点での答えとしては、「明確な寿命は不明だが、極めて長寿命に設計されている」ということになります。時計に使われるICや水晶振動子は、一般的な家電製品のものとは異なり、非常に厳しい品質基準のもと、低消費電力で長期間安定して動作するように作られています。特にグランドセイコーに搭載されるものは、その中でもトップクラスの品質管理がなされているはずです。

現時点では電子部品の具体的な寿命は明確ではないものの、時計専用に設計された高信頼性の部品であり、すぐに壊れてしまうようなものではないと考えられます。しかし、スプリングドライブの寿命を考える上で、この電子部品の存在が、純粋な機械式時計とは異なるリスク要因であることは否定できません。この点については、後述する「部品保有期間」の問題とも関連してきます。

スプリングドライブは壊れやすい?衝撃・磁気の影響

時々、「スプリングドライブは特殊な機構だから壊れやすいのでは?」という声を聞くことがあります。しかし、これは必ずしも正しくありません。

むしろ、衝撃に関しては、機械式時計の最もデリケートな部分であるテンプ周りの部品(ひげゼンマイ、てん真など)が存在しないため、構造的には衝撃に強い面もあります。とはいえ、スプリングドライブも数百の部品からなる精密機械であることに変わりはありません。落下などの強い衝撃は、針飛びや内部部品の破損・変形に繋がる可能性があるため、当然避けるべきです。

一方、磁気に関しては注意が必要です。機械式時計でもある程度の影響は受けますが、スプリングドライブは電子部品(特にローターの回転を制御する部分)を含むため、強い磁気を発する製品(スマートフォン、パソコン、バッグの留め具など)に近づけると、精度が狂ったり、最悪の場合止まってしまったりする可能性があります。これはクォーツ時計と同様の弱点と言えます。

以下の点に注意して、スプリングドライブの寿命を縮めるような故障リスクを減らしましょう。

  • 強い衝撃や振動を与えない(装着したままスポーツをするなどは避ける)
  • 磁気を発するもの(スマホ、PC、スピーカー、磁気ネックレス等)に近づけない(JIS規格で5cm、できれば10cm以上離す)

特別壊れやすい機構というわけではありませんが、他の高級時計と同様に、衝撃や磁気には十分注意し、精密機械として丁寧に扱うことが大切です。

懸念点:部品保有期間「10年」問題

スプリングドライブの長期使用における最大の懸念点として挙げられるのが、この「部品保有期間」の問題です。グランドセイコーは公式サイトなどで、修理に必要な部品の保有期間を「製造終了後、約10年間」を目安としていると公表しています。

この「10年」という数字だけが独り歩きし、「グランドセイコーは10年経ったら修理してくれない」「スプリングドライブは10年しか使えない」といった誤解や不安の声に繋がることがあります。しかし、これは正確ではありません。

まず、この期間はあくまで「目安」であり、10年経過したら即座に一切の修理を受け付けなくなるわけではありません。メーカーとしては、可能な限り長くサポートを提供する姿勢を見せており、実際には10年以上経過したモデルでも修理対応されているケースは多々あります。共通部品や代替可能な部品で対応できる場合も多いでしょう。

とはいえ、部品保有期間10年という目安が存在する以上、モデルによっては将来的にメーカーでの修理が困難になるリスクはゼロではありません。特に、スプリングドライブの心臓部であるICなど、専用設計された特殊部品の供給が終了した場合、修理が不可能になる可能性は、純粋な機械式時計よりも高いと言わざるを得ません。これが、スプリングドライブの寿命を考える上で、ユーザーが最も不安に感じる現実的なリスク要因と言えるでしょう。この問題にどう向き合うかは、次のセクションで詳しく解説します。

10年過ぎたら絶対修理できないわけじゃないんだ。ちょっと安心したけど、やっぱり早めのメンテが大事か…

グランドセイコー スプリングドライブの寿命を延ばす【メンテナンスと結論】

スプリングドライブの独自構造や懸念点を理解した上で、次に考えるべきは「どうすれば、この時計と長く付き合っていけるか?」ということです。ここでは、スプリングドライブの寿命を最大限に延ばすための具体的なメンテナンス方法、そして最終的に「一生もの」と言えるのか、その結論に迫ります。

推奨オーバーホール頻度とその理由

スプリングドライブ搭載モデルを長期間にわたって良好な状態で使用するためには、定期的なオーバーホール(分解掃除)が欠かせません。グランドセイコーが公式に推奨しているオーバーホールの頻度は、3~4年に一度です。

「え、機械式時計と同じくらいじゃない?」と思われるかもしれませんね。実際、グランドセイコーの機械式ムーブメント(9S系)の推奨頻度が2~3年ですから、それよりは少し長いスパンです。一方で、クォーツムーブメント(9F系)の推奨頻度7~8年と比べると、やはり頻度は高くなります。

なぜこの頻度なのでしょうか? スプリングドライブはゼンマイを動力源とし、多くの歯車で構成される「機械式」の部分を持っています。これらの部品の軸受けには、摩耗を防ぎスムーズな動きを保つために潤滑油が使われています。この潤滑油は時間と共に劣化・揮発し、その性能を失っていきます。油が切れた状態で時計を使い続けると、部品同士が直接摩耗し、精度低下や故障の原因となります。3~4年という期間は、この潤滑油の状態を良好に保ち、部品の摩耗を防ぐために推奨されるサイクルなのです。

トライシンクロレギュレーターという電子制御機構があるとはいえ、時計を動かす根幹は機械的な力です。スプリングドライブの寿命を健全に保つためには、この機械部分の定期的なメンテナンスが不可欠と言えるでしょう。

オーバーホール料金の目安と内容

定期的なオーバーホールが重要だとわかっても、気になるのはその費用ですよね。グランドセイコーの正規サービスである「コンプリートサービス」の料金は、モデルによって異なります。あくまで目安ですが、2025年5月時点での情報を参考にすると、以下のようになっています。(※料金は改定される可能性があるため、必ず依頼前に公式サイトでご確認ください)

モデル(キャリバー) 料金目安(税込)
スプリングドライブ 3針(9R65など) 70,000円台後半 ~
スプリングドライブ GMT(9R66など) 80,000円台後半 ~
スプリングドライブ クロノグラフ(9R86/9R96など) 110,000円台 ~
スプリングドライブ 8Days(9R01) 別途見積もり
グランドセイコー コンプリートサービス料金目安(スプリングドライブ)

「結構高いな…」と感じるかもしれませんが、このコンプリートサービスには、単なる分解・洗浄・注油だけでなく、多くの作業が含まれています。具体的には、ムーブメントの分解・洗浄・注油・組立・精度調整、消耗部品(パッキン等)の交換、防水検査、ライトポリッシュ(ケース・ブレスレットの軽い研磨)、ブレスレットの洗浄など、時計全体をリフレッシュする総合的なメンテナンスとなっています。

もちろん、メーカー正規サービス以外にも、時計修理専門店でオーバーホールを受け付けている場合があります。一般的にはメーカーより安価な傾向がありますが、スプリングドライブは非常に特殊な機構のため、修理技術や設備、純正部品の入手経路などを考慮すると、基本的にはメーカー(グランドセイコースタジオなど)に依頼するのが最も安心と言えるでしょう。スプリングドライブの寿命を考えれば、数年に一度の必要な投資と捉えたいところです。

部品保有期間切れでも修理は可能?

前のセクションで触れた「部品保有期間10年」問題。では、実際に保有期間の目安を過ぎてしまった場合、修理は本当に不可能なのでしょうか?

結論から言うと、「必ずしも不可能ではないが、困難になる可能性はある」というのが現状です。メーカー(セイコー/グランドセイコー)は、保有期間を過ぎても可能な限り修理対応を続ける姿勢を示しています。特に、他のモデルと共通で使われている汎用部品や、代替可能な部品で対応できる場合は、修理を受け付けてもらえる可能性が高いです。

問題となるのは、やはりスプリングドライブ特有の部品、特にICなどの電子部品が故障した場合です。これらの専用部品の製造が終了し、在庫もなくなってしまうと、メーカーでも修理が不可能になるリスクは否定できません。

では、メーカー以外ではどうでしょうか? 信頼できる修理専門店の中には、メーカーでのサポートが終了した時計の修理に対応してくれるところもあります。職人の技術で部品を再生したり、代替部品を探したりして修理を行うケースです。しかし、スプリングドライブの修理は極めて高度な技術と知識を要するため、対応できる専門店は非常に限られます。特に電子部品の故障となると、メーカー以外での対応はほぼ不可能と考えた方が良いでしょう。

10年経過後も修理の道が完全に閉ざされるわけではありませんが、メーカー以外での対応は限定的であり、特に専用電子部品の故障リスクは残ります。やはり、部品供給があるうちに定期的なオーバーホールを受け、良好な状態を維持することが、スプリングドライブの寿命を長く保つ最善策と言えそうです。

やっぱりメーカーに頼るのが基本だけど、万が一の時のために修理店の情報も知っておくと安心かも。

中古スプリングドライブ購入時の注意点

スプリングドライブ搭載モデルは高価なものが多いため、中古での購入を検討される方もいらっしゃるでしょう。状態の良いものが見つかれば、確かにお得に手に入れるチャンスです。しかし、中古購入には特有のリスクも伴います。スプリングドライブの寿命や状態を見極めるために、以下の点に注意しましょう。

  • オーバーホール履歴: いつ、どこでオーバーホールされたか? 記録(修理証明書など)はあるか? 直近でOHされていない場合、購入後すぐに費用がかかる可能性があります。
  • 外装の状態: ケースやブレスレット、風防(ガラス)に大きな傷や打痕はないか? ライトポリッシュで消えない深い傷は価値を下げます。
  • 動作確認: 時計は正常に動いているか? 精度は安定しているか? パワーリザーブはカタログスペック通りか?(可能であれば確認)
  • 付属品と保証: 箱、保証書、余りコマなどの付属品は揃っているか? 販売店独自の保証が付いているか? 保証期間は?
  • 販売店の信頼性: 最も重要なポイントです。実績があり、評判の良い、信頼できる販売店から購入しましょう。フリマアプリなど個人間の売買はリスクが高いと言えます。

特に古いモデルや、メンテナンス履歴が不明な個体は注意が必要です。部品保有期間の問題も考慮すると、あまりに古いモデルは将来的な修理リスクが高まる可能性があります。価格の安さだけに飛びつかず、時計の状態、メンテナンス履歴、そして何より販売店の信頼性を慎重に確認することが、後悔しない中古選びの秘訣です。

長く愛用するための日常での扱い方

定期的なオーバーホールはもちろん重要ですが、日々のちょっとした気遣いも、スプリングドライブの寿命を延ばすためには大切です。高価な時計だからと神経質になりすぎる必要はありませんが、精密機械であることを忘れずに、以下の点を心がけましょう。

  • 衝撃・振動を避ける: 落下はもちろん、ゴルフやテニスなど、腕に強い衝撃がかかるスポーツ時の着用は避けましょう。
  • 磁気に近づけない: スマートフォン、パソコン、スピーカー、バッグの磁気式留め具など、強い磁気を発するものからは距離(最低5cm、推奨10cm以上)を保ちましょう。
  • 防水性能を過信しない: 日常生活強化防水(10気圧防水など)であっても、リューズがしっかり閉まっているか確認する、装着したままの入浴やサウナは避けるなど、油断は禁物です。パッキンは経年劣化します。
  • 極端な温度変化に注意: 高温になる場所(直射日光下の車内など)や、急激な温度変化(寒い屋外から暖かい室内へなど)は、内部の潤滑油や精度に影響を与える可能性があります。
  • 清潔に保つ: ケースやブレスレットについた汗や皮脂、汚れは、柔らかい布でこまめに拭き取りましょう。サビや劣化の原因になります。
  • 適切に保管する: 長期間使用しない場合も、磁気や湿気の少ない場所で保管しましょう。
  • 定期的に動かす: 自動巻きモデルでも、時々はリューズでゼンマイを巻き上げてあげると、内部の油が固まるのを防ぐ効果が期待できます。

特別なことをする必要はありませんが、精密機械であることを意識した丁寧な扱いが、結果的に時計を長持ちさせることに繋がります。日々のちょっとした気遣いで、愛機への愛着も深まるはずです。

結局スプリングドライブは「一生もの」なのか

さて、様々な角度からスプリングドライブの寿命について検証してきましたが、核心的な問い「スプリングドライブは一生ものなのか?」に対する答えはどうなるでしょうか。

これは「一生もの」をどう定義するかによりますが、私の考えとしては、「適切なメンテナンスを継続する意思とコストを許容できるならば、非常に長期間、世代を超えて愛用できる可能性を十分に秘めた時計」と言えます。

機械式時計と同様に、部品交換を前提とすれば理論上の寿命は非常に長いです。加えて、クォーツに匹敵する高精度と、電池交換不要という実用性を兼ね備えています。これは大きな魅力です。

ただし、忘れてはならないのが「電子部品の存在」と「部品保有期間の問題」です。これらは純粋な機械式時計にはない、スプリングドライブ特有のリスク要因です。将来的に、専用部品の供給が途絶え、修理不能になる可能性はゼロではありません。

したがって、「100%絶対に一生使える」と断言することはできません。しかし、セイコー/グランドセイコーというメーカーの技術力とサポート体制への信頼、そして何より、この唯一無二の機構を持つ時計を大切に使い続けたいというオーナー自身の「愛情」があれば、「一生もの」にすることは十分に可能だと私は考えます。そのリスクを理解し、受け入れた上で、定期的なメンテナンスという名の愛情を注ぎ続ける覚悟があるかどうかが、最終的な鍵となるでしょう。

なるほど…。絶対とは言えないけど、ちゃんと手入れすれば長く使える可能性は高いってことか。あとは自分がどう考えるかだな。

総括:グランドセイコー スプリングドライブの寿命はメンテナンス次第

今回の記事では、グランドセイコー スプリングドライブの寿命について多角的に掘り下げてきました。

最後に、今回の記事内容のポイントをまとめます。

  • スプリングドライブはゼンマイと電子制御の独自機構
  • 機械式の力強さとクォーツ級の高精度を両立
  • 流れるようなスイープ運針が最大の魅力
  • 公式見解は「定期OHで長期使用可能」で明確な寿命設定なし
  • 電池交換は不要、自己発電で駆動する
  • 精度は月差±15秒~±10秒と極めて高い
  • パワーリザーブは72時間以上と実用的
  • 機械式時計と同様、OHと部品交換で長く使える可能性
  • クォーツ時計のような回路寿命の概念とは異なる
  • 懸念点は内蔵される電子部品(IC等)の長期耐久性
  • 電子部品故障の場合、修理が困難になるリスクあり
  • 衝撃や磁気には他の精密時計と同様に注意が必要
  • 部品保有期間の公式目安は製造終了後約10年
  • 期間経過後もメーカーは可能な限り修理対応の方針
  • 推奨オーバーホール頻度は3~4年に一度
  • 定期的なOHが機械部分の性能維持に不可欠
  • OH料金は安くないが総合的なメンテナンス内容
  • 中古購入はOH履歴と販売店の信頼性が重要
  • 日々の丁寧な扱いが時計の寿命を延ばす
  • 「一生もの」かはリスク理解とメンテナンス次第

今回は、セイコー独自の機構「スプリングドライブ」の寿命について、その仕組みからメンテナンス、そして「一生もの」と言えるのかどうかまで、詳しく解説しました。適切な手入れをすれば非常に長く使える可能性を秘めている一方で、電子部品や部品保有期間といった特有の懸念点があることもご理解いただけたかと思います。

スプリングドライブというユニークな機構への理解を深め、ご自身の時計選びや、すでにお持ちの時計との付き合い方において、この記事がお役に立てれば幸いです。

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